「もしものとき、誰に連絡がいくのだろう」
「エンディングノートは書いたけれど、家の引き出しに入れたままで大丈夫だろうか」
こうしたご相談が、ここ数年でとても増えました。
背景にあるのは、頼れる身寄りが近くにいない高齢の方の増加です。横浜市の発表によれば、市内の高齢者のおよそ10人に1人、人数にして約8万7000人の方が、いざというときに頼れる親族がいない状況にあるとされています。
実は横浜市には、こうした不安に応えるための公的な仕組みが複数用意されています。しかも、その多くは無料で使えます。ところが「あることを知らない」という理由だけで使われていないケースが少なくありません。
この記事では、横浜市にお住まいの方が今日から使える終活支援の仕組みを、窓口・対象・手続きの順に整理してご紹介します。
1. ヨコハマあんしん登録(情報登録事業)
どんな制度か
緊急連絡先やエンディングノートの保管場所などをあらかじめ市に登録しておく制度です。
登録した方が病気や事故で意思表示が難しくなったとき、あるいは亡くなったときに、警察・消防・医療機関・福祉事務所などから市に照会が入ります。市は、登録された内容をその照会に対して回答します。
つまり、自分では説明できない状態になったときに、代わりに情報を伝えてくれる仕組みです。エンディングノートを書いていても、その存在が誰にも知られていなければ意味がありません。この制度は、その「知られていない」という穴を埋めるものだとお考えください。
対象になる方
横浜市に住民登録があり、実際に市内にお住まいの65歳以上の方です。
所得や資産による制限はありません。ご家族がいらっしゃる方でも登録できます。なお、市外へ転出された場合は登録情報が削除されます。
登録できる7つの項目
希望する項目を1つから選んで登録できます。すべて埋める必要はありません。
項目 | 登録できる内容 |
|---|---|
① かかりつけ医療機関 | 2か所まで(名称・住所・電話番号) |
② エンディングノート/もしも手帳 | 保管(所持)場所 |
③ 本籍地・筆頭者 | — |
④ 緊急連絡先 | 3名まで(住所・氏名・電話番号・続柄) |
⑤ 葬儀・遺品整理等の生前契約先 | 2か所まで(名称・連絡先) |
⑥ 納骨先 | 所在地・名称・連絡先 |
⑦ 遺言書の保管場所 | 形式・保管場所・作成日 |
⑤〜⑦については、緊急連絡先とは別に「お伝えして良い連絡先」を2名まで指定できます。また⑦の遺言書に関する情報は、ご本人が亡くなった後にのみ開示される扱いです。
ここで注目していただきたいのが、⑤の「生前契約先」と⑦の「遺言書の保管場所」です。せっかく葬儀の生前契約を結んでいても、遺言書を作っていても、亡くなった後に誰もその存在を知らなければ、契約も遺言も動きません。この2項目は、すでに準備をしている方ほど登録の価値が高い項目といえます。
申込方法
スマートフォンやパソコンから、横浜市電子申請・届出システムで登録します。
本人確認資料として、次のいずれかが必要です。
- 顔写真付きの資料を1点:マイナンバーカード(顔写真の面)、運転免許証、パスポート、障害者手帳など
- 顔写真のない資料を2点:介護保険証、年金手帳、障害福祉サービス受給者証など
「パソコンの操作が苦手」「近くに手伝ってくれる人がいない」という場合は、各区の社会福祉協議会で入力支援を受けられます。事前予約制で、予約はあんしん終活相談センター(045-201-2045/平日9時〜17時)が受け付けています。
また、郵送で提出する書面用の登録用紙一式が、区役所の区政推進課広報相談係と高齢・障害支援課に置かれています。
登録後の流れ
手続きから登録カードと登録内容確認書が届くまで、おおむね1か月半ほどかかります。届いたら、登録内容確認書で内容に間違いがないかを必ずご確認ください。
登録内容の変更や、利用の終了も、同じく電子申請システムから手続きできます。引っ越し、かかりつけ医の変更、緊急連絡先の方の状況が変わったときなどは、忘れずに更新しましょう。登録は一度きりの手続きではなく、定期的な見直しが必要な仕組みです。
2. あんしん終活相談センター
2025年11月28日に開設された、横浜市社会福祉協議会が運営する相談窓口です。
「終活と言われても何から手をつければいいかわからない」という段階から相談できます。ヨコハマあんしん登録の入力支援の予約窓口も兼ねています。
- 所在地:横浜市中区桜木町1-1 横浜市健康福祉総合センター9階(JR・市営地下鉄 桜木町駅から徒歩2分)
- 電話:045-201-2045
- 開所日時:月曜〜金曜 9時〜17時(土日祝・年末年始を除く)
桜木町駅からすぐという立地なので、他の用事のついでに立ち寄りやすいのも利点です。
3. リーフレット「終活みちしるべ」
横浜市健康福祉局が発行している案内冊子です。市のウェブサイトからPDFでダウンロードできるほか、各区役所などで配布されています。
将来に向けて必要になる備え、利用できる行政サービス、そして終活サービスを提供する民間業者を選ぶ際の留意点がまとめられています。
3つ目の「業者を選ぶ際の留意点」は、意外と他では手に入りにくい情報です。終活関連のサービスは事業者ごとに内容も料金体系も大きく異なります。行政が中立的な立場でまとめた資料は、比較検討の出発点として役に立ちます。
4. 区版エンディングノート
横浜市では18区それぞれが独自の区版エンディングノートを作成しています。
お住まいの区の高齢・障害支援課や、地域ケアプラザの窓口などで無料配布されています。市販のものを買う前に、まずは区役所で手に取ってみることをおすすめします。地域の相談先や区内の施設情報が載っているぶん、実用的な場合があります。
エンディングノートの書き方そのものについては、当窓口のコラム「エンディングノートとは?書き方例・必要な項目について詳しくご紹介!」もあわせてご覧ください。
5. 終身サポート事業者との連携協定(2026年12月に事業者リスト公表予定)
いま横浜市が進めているなかで、特に注目していただきたい取り組みです。
身寄りのない高齢の方に対して、入院・入所時の手続き支援、日常生活の支援、亡くなった後の事務手続きなどを行う民間サービスを「高齢者等終身サポート事業」と呼びます。
このサービスは需要が急速に伸びている一方で、利用者から見て事業者の良し悪しを見極めるのが難しいという課題が指摘されてきました。契約が長期にわたり、しかも実際にサービスが提供されるのは自分が判断できなくなった後、あるいは亡くなった後だからです。
そこで横浜市は、国が2024年6月に公表した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」をもとに、市独自の評価基準を策定しました。項目は24におよび、次のような市独自の視点が盛り込まれています。
- 寄付・遺贈の受領を禁止する
- 前払い金を原則として禁止する
- 事業継続の体制が確保されていること
市はこの基準を満たした事業者と連携協定を結び、そのリストを市のウェブページで公表する予定です。事業者の公募は2026年7月末に開始され、9月25日17時に締め切られます。協定の締結とリストの公表は、2026年12月中が予定されています。
事業者選びで迷っている方は、急いで契約せず、このリストの公表を待つという選択肢もあります。
6. 住まいの終活(空き家対策)
横浜市は建築局を中心に、住まいに焦点をあてた終活の情報発信も行っています。
ご自宅を将来どうするかを早めに決めておかないと、空き家になってから選択肢が狭まります。管理が行き届かない状態が続いて「管理不全空家等」や「特定空家」に指定され、さらに勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、税額が大きく上がる可能性があります。
市は神奈川県居住支援協議会の「空き家にしない『わが家』の終活ノート」を紹介しているほか、LINEから使える空き家予防のサービスとも連携しています。一般的なエンディングノートとあわせて活用すると、ご家族と話し合うきっかけになります。
民間の相談窓口という選択肢|横浜市終活相談窓口
ここまでは、横浜市が用意している公的な仕組みをご紹介してきました。最後に、民間の立場から終活のご相談をお受けしている当窓口についてもご案内させてください。
横浜市終活相談窓口(一般社団法人/2020年4月設立)は、横浜エリアに特化した終活の総合相談窓口です。市の事業ではありませんが、公的な制度だけでは手の届かない部分を補う役割を担っています。
ワンストップでご相談いただける6つの分野
弁護士・司法書士・税理士・行政書士・社会福祉士などの専門家がチームを組み、次の分野を横断してお手伝いしています。
分野 | 主な内容 |
|---|---|
身のまわりの整理から、ご遺族に代わっての遺品整理まで | |
残されたご家族が迷わぬよう、いまできる備えを | |
空き家や使わなくなった不動産、リースバックのご相談 | |
入院・施設入居時の身元引受から、日常の見守りまで | |
認知症などに備えた財産管理の仕組みづくり | |
法的に効力のある遺言書の作成から保管まで |
終活のお悩みは、たいてい一つの分野では収まりません。「実家をどうするか」というご相談が、相続と不動産と遺品整理の3つにまたがる、というのはよくあることです。分野ごとに窓口を探し直さずに済むよう、まとめてお受けしています。
わたしたちの3つの約束
- 専門家チームによる総合サポート — 各分野の専門家が連携し、横断的な課題に対応します
- 初回相談は無料 — 「何から始めればいいかわからない」という段階で構いません
- 横浜エリアに特化 — 地域の制度や事情を熟知したスタッフが、地に足のついたご提案をいたします
3つ目は、この記事の内容とも重なる部分です。ヨコハマあんしん登録や区版エンディングノートのように、無料で使える市の制度で足りるご相談も少なくありません。まずはそちらをご案内したうえで、そこで埋まらない部分についてご提案するようにしています。
一般社団法人 横浜市終活相談窓口
- 所在地:〒232-0016 横浜市南区宮元町2-37 中村ビル2階
- 電話:0120-510-069(通話無料)
- 受付時間:10:00〜19:00(水・日定休)
- ウェブサイト:https://y-syukatsu.com//お問い合わせフォーム
どこから始めればよいか
情報が多いので、優先順位をつけて整理します。
まず今週できること
- お住まいの区役所で区版エンディングノートを受け取る
- 「終活みちしるべ」をダウンロードして目を通す
次の1か月でできること
- ヨコハマあんしん登録に申し込む(登録カードが届くまで1か月半かかるため、早めに)
- 迷ったらあんしん終活相談センター(045-201-2045)に電話してみる
その先で検討すること
- 遺言書、任意後見契約、死後事務委任契約など、法的な備えを整える
- ご自宅の将来をご家族と話し合う
順番に意味があります。①〜④は無料で、失敗のしようがありません。まずここを済ませてから、費用のかかる⑤⑥に進むのが安全です。
公的制度と専門家、それぞれの役割
ここまでご紹介した横浜市の制度は、いずれも優れた仕組みです。ただし、できることの範囲には限りがあります。
たとえばヨコハマあんしん登録は、情報を預かって伝える制度であって、実際に手続きを代わりに行ってくれる制度ではありません。緊急連絡先を登録しても、その方が実際に対応してくれるかどうかは別の問題です。遺言書の保管場所を登録しても、遺言の内容が法的に有効かどうかは市が判断するわけではありません。
- 情報を託して伝えてもらう → ヨコハマあんしん登録
- 何から始めるか相談する → あんしん終活相談センター、当窓口
- 財産を誰にどう引き継ぐかを法的に決める → 遺言書(司法書士・弁護士)
- 判断能力が低下したときに備える → 任意後見契約、家族信託
- 亡くなった後の手続きを実際に行ってもらう → 死後事務委任契約
- 入院・入所時に身元引受人が必要 → 身元保証サービス
公的制度と民間・専門家のサービスは、対立するものではなく、組み合わせて使うものです。無料で使える公的制度で土台を作り、そこで埋まらない部分を専門家に相談する。この順番が、費用の面でも安心の面でも合理的です。
よくあるご質問
Q. ヨコハマあんしん登録に費用はかかりますか。
A. 登録に費用はかかりません。
Q. 家族がいるのですが、登録する意味はありますか。
A. あります。ご家族が遠方にお住まいの場合や、緊急時にすぐ連絡がつかない場合に備えて登録される方も多くいらっしゃいます。所得や家族構成による制限はありません。
Q. 登録した内容は誰でも見られるのですか。
A. いいえ。警察、消防、医療機関、福祉事務所、ご自身が指定した連絡先などからの照会に対して、市が回答する仕組みです。遺言書に関する情報については、ご本人が亡くなった後にのみ開示されます。
Q. 横浜市外に住んでいますが、同じ制度は使えますか。
A. ヨコハマあんしん登録は横浜市にお住まいの65歳以上の方が対象です。近隣では横須賀市が「エンディングプラン・サポート事業」「終活情報登録伝達事業」を、鎌倉市も同種の事業を実施しています。制度の名称も内容も自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村の高齢者福祉担当課にお問い合わせください。
おわりに
終活というと、どうしても遺言書や相続の話から入りがちです。しかし実際にご相談を受けていると、もっと手前の「もしものときに、自分の情報が誰にも伝わらない」という不安を抱えている方がとても多いと感じます。
横浜市の制度は、まさにその不安に応えるものです。無料で、手続きも複雑ではありません。まずはここから始めてみてはいかがでしょうか。
そのうえで「遺言書はどう書けばいいか」「亡くなった後の手続きを誰に頼めばいいか」といった段階に進まれるときは、ぜひ一度ご相談ください。横浜市終活相談窓口では、弁護士・司法書士をはじめとする専門家チームが、相続・遺言・生前整理・身元保証まで、ワンストップでお手伝いします。
無料電話相談:0120-510-069(受付時間 10:00〜19:00/水・日定休)
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※本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。制度の内容や受付状況は変更される場合がありますので、最新の情報は横浜市のウェブサイトまたは各窓口でご確認ください。