終活お役立ちコラム

相続に重要な役割を果たす遺言状はどんなケースで効力がなくなる?

ある程度財産を持っているうえで、高齢になっている方には遺言状の作成が推奨されています。理由としては、こうした遺言状がないと、相続の際に遺族の間でトラブルが起こりかねないからです。

逆に、遺言状さえあれば相続の方針が明確になり、遺族もスムーズに事後処理を進められるようになるでしょう。とはいえ、遺言状の形式に気を配らないと効力がなくなる可能性もあるので、注意しなければいけません。

遺言状が効力を持つ範囲

そもそも、遺言状を書くことで遺族の相続をどこまで制限できるのでしょうか。まず、遺言状を書くことによって、遺産相続の割合を変動させることができます。遺産相続は、配偶者が半分、残りの半分を子どもが受け継ぐのが一般的です。とはいえ、こういった遺産相続の割合を望まない方もいるでしょう。

たとえば、妻や夫がすでに高齢であるため、遺産を相続させても仕方ないから、その分を子どもに多く相続させたいと考えたとします。

その際は、遺言状にその旨を記せば、亡くなった後にそれが根拠となり遺族は遺産分割協議をスムーズに進められることができるでしょう。また、親族以外の人間に相続させることも遺言状では可能になります。

生前は認知していなかったものの、遺言状で私生児を自分の子どもと認めたうえで遺産を相続させるというケースは珍しくありません。それ以外にも自分の遺族に遺産は渡さず、より公共の利益に役立ててもらうため寄付するといった選択も可能です。

遺産分割を助けてくれる人も遺言状で決められる

先ほどは、遺言状で決められる相続対象について見てきました。遺言状ではそれ以外にも、遺産分割の協議をサポートしてくれる人を決めることもできます。

たとえば、遺言執行人はその最たる例です。遺産相続は、お金が絡む問題のため、ともすると親族の間で骨肉の争いとなりかねません。

いかに亡くなった後の話だろうと、遺言を残す人としては、できる限り穏便に相続協議を行ってほしいというのが心情でしょう。そんな時に、第三者の立場として遺産分割協議に参加するのが遺言執行人です。

遺言執行人は、遺言書に書かれたことをもとに、誰に遺産をどれだけ相続させるのかといったことを粛々と実行していかなければいけません。一般的には、弁護士や行政書士などといった法律のプロが遺言執行人になることが多いです。

ちなみに、遺言執行人にも当然報酬があって当然ですから、これについてもどれだけの額を渡すかを事前に遺言状に書いておくのが望ましいでしょう。

遺言状には時効はある?

仮に、被相続人が生前遺言を書いたのに、遺族がそれを見つけられなかったとしましょう。そして10年ほど経った後に遺言状を見つけたとします。
この場合、遺言状は有効なのでしょうか。

結論から言えば、遺言状には時効はありませんから、遺族は改めて遺言状にもとづいて協議を行わなくてはいけません。ちなみに、遺言状がしばらく前に書かれたからという理由でも無効にはならないです。

たとえば、被相続人が亡くなる10年前に遺言状を書いたとしても、それは変わらず効力を持ちます。ただし、10年前に書いた遺言状の内容を変更したいからという理由で、新しい遺言状を作成する場合は注意しなければいけません。

基本的に遺言状は最新の日付が優先されるものです。とはいえ、遺族の間で前の遺言状ではこう書いていたのだから新しい遺言状の内容は無効だ、といったトラブルになりかねません。新しい遺言状を作成する場合は、昔の遺言状を破棄するか、無効にする旨を新しい遺言状に書くようにしましょう。

遺言状はパソコンで作ってもOK?

近年はパソコンの普及も相まって、鉛筆やペンではなくパソコンで書類を作成することが当たり前になりました。中には、めっきりペンで字を書く習慣がなくなってしまったから、読めるような字を書けなくなってしまっているという方もいるでしょう。

となると、遺言状もより読みやすいようにパソコンで書いてもいいのではないかと考える人もいるはずです。仮に、パソコンで文章を書いたうえで、紙面に印刷した遺言状があったとしたらそれは効力を持つのでしょうか。

これについては無効と言わざるを得ません。遺言状はすべて自筆で書いてこそ効力を持ちます。一見すると時代錯誤のようではありますが、これは遺言状の悪用を防ぐためにも必須です。

たとえば、被相続人がなんらかの障害を負い、意識が朦朧になってしまったとしましょう。ここで、パソコンでの遺言状の作成を許してしまうと、いくらでも相続人にとって有利な遺言状を作成できてしまいます。

また、録画や録音などによって遺言を残すのも無効です。被相続人を脅して相続人にとって有利な遺言を録画ないし録音ができる可能性があるからには現実的ではありません。

文字を書けなくなった人が遺言状を作るにはどうすればいい?

先ほどは、遺言状は自筆で書くのが原則という話をしました。そうなると、たとえば腕や指に障害を負ってしまい、文字を書くのが困難になってしまった人が遺言状を作成するのはできないのでしょうか。

これに関しては公正証書遺言という手段が残されています。公正証書遺言とは、役所などの公共機関が証人となって作成する遺言状のことです。遺言状は、正しい形式に則って自筆で書きさえすればそれだけで効力を持つものですが、より確実に遺言状を作りたいという方はこちらを利用するのがおすすめです。

そして、公正証書遺言では本人の自筆である必要がないので、文字を書く能力を失った人でも遺言状を作ることができます。このようなメリットがある公正証書遺言ではありますが、作成のためには多くの手間や費用がかかるのは否めません。

まず、公正証書遺言を作るためには、自治体の役所や弁護士などに相談しに行く必要があります。これに加えて、被相続人となる人だけでなく遺言状の正当性を保証する証人も2人付き添わなければいけません。

証人は配偶者や子どものような相続人になり得る方は対象外となり、血縁関係のない知人や友人がお願いする必要があります。さらには、公正証書遺言を作るにあたっては、戸籍謄本や住民票、財産目録を記した書類なども合わせて提出しなくてはいけません。

これに加えて、遺言状作成の手数料や相続の金額に合わせた手数料もかかります。このように、デメリットも否めない公正証書遺言ではありますが、一度作ってしまえばゆるぎない効力を発揮する遺言を残すこともできます。

効力のある遺言状を作るために注意しておきたいポイント

ここまで、遺言状が効力を持つ範囲や遺言状はどのように作れば効力を持つのかという点について解説してきました。とはいえ、仮に自筆で遺言状を書いたとしても場合によっては無効になる可能性もあります。

ここからは、遺言状が無効になるケースについて見ていきましょう。まず、日付の書かれていない遺言状は無効です。遺言状に日付が書かれていなければ、被相続人の死後に遺言状が偽造された可能性もぬぐえなくなってしまいます。

あらぬ疑いを除くためにも、いつ遺言状を作成したかということは確実に記しておきましょう。また、遺言状の最後には作成者の名前のほかにハンコも押さなくてはいけません。名前やハンコの押されていない遺言状は無効になってしまいます。

公的な書類にはハンコを押すのが普通ですが、これは遺言状でも例外ではないです。ちなみに、ハンコについては実印、認印のどちらでもかまいません。とはいえ、シャチハタなどの簡素なハンコでは無効になってしまうので注意してください。

遺言状を正しく訂正していないと無効になる?

会社で作る書類や役所に提出する書類を作成する際に、ミスが起こるのは避けられません。そういった時、会社には会社なりの、役所には役所なりの訂正ルールがあります。

そして、遺言状を訂正する際にも独特のルールがあるのですが、これを守らないで訂正してしまうと、その瞬間遺言状の効力がなくなってしまいかねません。

ほかの部分に問題がなくても、訂正箇所が間違っていたせいで遺言状の意味がなくなってしまったとなっては目も当てられませんから、訂正ルールはしっかりと覚えておくようにしましょう。

まず、たとえば漢字を間違えたので訂正したいという時はどうすればいいのでしょうか。これについては、まず該当の文字の上に二重線を引きます。そして、二重線の横にハンコを押し、さらに自分の名前をフルネームで記しましょう。

ここまでは、公的な文書などと訂正ルールは変わりありません。会社などでもこういったルールを採用しているところは多いのではないでしょうか。ですが、遺言状ではさらにこれに加えて、「1文字を削除」と余白に訂正内容を書き込まなくてはいけません。遺言状は作成者が亡くなった後に読まれるものです。

そのため、ここはこういった意図で訂正したと説明する人がいなくなりますから、文章の内容を厳密に定めなくてはいけません。面倒なようにも思えますが、正確な遺言を残すためには欠かせない作業ですので、訂正ルールは順守するようにしましょう。

遺言書を検認しないと無効になる?

被相続人が亡くなったら遺言書を開封する権利が遺族たちに発生します。とはいえ、亡くなった瞬間すぐさま開封していいというものではありません。遺族は、遺言書を家庭裁判所に持っていき、これが正式な遺言書であると検認してもらう必要があります。

もしも検認を受けないまま遺言書を開封してしまったら、罰金を科される可能性が否めません。もっとも、だからといって遺言書そのものが無効になるわけではないです。

ちなみに、こういった検認の手続きは、被相続人が生前のうちに法務局に持っていけば省略することができます。遺族に余計な手間をかけませんし、遺言状が正しく書けているかを確認してもらえるので、有効活用するようにしましょう。

まとめ

遺言状は、遺族のその後の生活を左右する重要な書類です。遺言状を作成するためには面倒な手続きを経なければいけませんが、遺族が穏やかに過ごせるようしっかりと残すようにしましょう。

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