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遺産分割調停(相続調停)とは?有利に進める手順と流れを解説

ご家族を亡くされた後、遺産分割で揉めてしまうことは少なくありません。親族間のトラブルは精神的にも負担が大きいため、円満な解決を目指したいものです。

遺産分割調停とは、相続によって発生した財産の分配をめぐる紛争を解決するための法的手続き。遺言がない場合や、遺言があっても相続人間で意見の対立が生じた場合に、公正かつ円滑に財産分割を進めることができます。この調停を通じて、相続人同士の対立を避け、より良い解決を図ることが目指されます。

今回は、遺産分割調停の基本的な流れと、それを有利に進めるための具体的な手順について詳しく解説。また、遺産分割調停を行うメリットとデメリットも併せてお伝えします。

この記事が、遺産分割調停について理解を深め、円満な解決に向けて一歩踏み出すための参考になれば幸いです。

遺産分割調停(相続調停)とは?

遺産分割調停(相続調停)とは、家庭裁判所が提供する調停制度の一つで、相続によって発生した財産分配に関する紛争を解決するための手続きです。
この制度は、相続人間の対立や意見の食い違いがある場合に利用されます。特に、遺言書がない場合や、遺言があってもその内容について異議があるときに、相続人たちが円滑かつ公平に財産を分割する手段として設けられています。

調停には、専門的知識を持つ調停委員が参加し、双方の意見を聞きながら最適な解決策を探ります。調停委員は中立的立場から相続人たちの間の調整役を務め、問題の解決に導くことが求められます。遺産分割調停の主な目的は、法的な争いに発展する前に、相続人同士の合意に基づいた解決を図ることにあるのです。

また、この調停を利用することで、裁判所を通じての長期にわたる訴訟に比べて、時間や費用を節約することが可能。調停は非公開で行われ、相続人たちのプライバシーが保護されるため、家庭内の問題を外部に漏れることなく解決できるという利点もあります。

遺産分割調停は、相続における感情的な対立を和らげ、家族間の関係を維持しながら適切な解決を目指すための重要な選択肢となっています。

遺産分割調停を行う手順

遺産分割調停を行う手順は、相続に関する争いを解決するために必要な手続きを段階的に進めるものです。以下が、遺産分割調停を行う手順の詳細となります。

1.調停申立ての準備
2.家庭裁判所への申立て
3.調停委員の選定
4.調停資料の準備

ここから、各手順を詳しく解説していきます。

1.調停申立ての準備

遺産分割調停を始めるには、まず申立ての準備が必要です。これには、相続財産のリストアップ、相続人の確認、必要な書類の収集が含まれます。具体的には、被相続人の戸籍謄本、遺言書、財産目録、相続人全員の戸籍謄本や住民票などが必要です。また、申立てには所定の手数料もかかります。

2.家庭裁判所への申立て

調停申立書を作成し、家庭裁判所に提出します。申立書には、相続人全員の情報、相続財産の詳細、調停を希望する理由などを記載します。申立てが受理されると、家庭裁判所から調停期日が指定されます。

3.調停委員の選定

調停は家庭裁判所の調停委員会によって行われます。調停委員は、法律や相続に関する専門知識を持つ人々が選ばれ、中立的な立場で調停を進めます。

4.調停資料の準備

調停期日に向けて、各相続人は必要な資料を準備します。これには、相続財産に関する証拠書類や、自分の主張を裏付ける書類が含まれます。弁護士に依頼する場合は、この段階で法律相談を行い、資料の整理を進めます。

遺産分割調停の流れ

前項目では、遺産分割調停を行う手順についてお伝えしましたので、ここからは、遺産分割調停がおこなわれる流れについてお伝えします。
遺産分割調停がおこなわれる工程は、以下7つです。

1.申立て
2.期日の通知
3.調停期日の開始
4.調停の進行
5.調停成立
6.調停不成立の場合

ここから、各工程の詳細を解説します。

1.申立て

相続人の一人または複数が、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。申立てには、必要な書類(申立書、戸籍謄本、財産目録など)を添付し、所定の手数料を支払います。

2.期日の通知

家庭裁判所が申立てを受理すると、調停期日が指定されます。相続人全員に期日と場所が通知され、出席が求められます。通常、最初の期日は申立てから数週間後に設定されます。

3.調停期日の開始

調停期日には、相続人全員が出席し、調停委員会の前でそれぞれの主張を述べます。調停委員は双方の意見を聞き、合意に向けた話し合いを進めます。この過程では、相続人の意見を調整しながら、具体的な遺産分割の方法について協議します。

4.調停の進行

調停は一度の期日で終わることは少なく、複数回の期日を経て進行します。各期日ごとに進展が見られる場合もあれば、意見が対立して調整が難航する場合もあります。調停委員は、双方の主張を基に解決策を提案し、妥協点を探ります。

5.調停成立

調停が成立すると、調停調書が作成されます。調停調書には、合意した遺産分割の内容が詳細に記載され、相続人全員の署名が必要です。この調書は法的効力を持ち、合意内容に基づいて遺産分割が実施されます。

6.調停不成立の場合

調停が不成立となった場合、調停委員会はその旨を報告し、調停調書は作成されません。この場合、相続人は裁判での解決を目指すことになります。

遺産分割調停を行うために準備するもの

遺産分割調停を行うためには、以下の準備が必要です。

・被相続人の戸籍謄本(除籍謄本)
・相続人全員の戸籍謄本および住民票
・遺言書(存在する場合)
・財産目録
・申立書
・手数料
・不動産の登記簿謄本

これらを揃えることで、スムーズな調停手続きを進めることができるでしょう。

被相続人の戸籍謄本(除籍謄本)

戸籍謄本は、被相続人が死亡したことを証明し、相続が開始されたことを確認するために必要です。また、相続人全員を確定するための基礎資料となります。

相続人全員の戸籍謄本および住民票

相続人全員の戸籍謄本および住民票は、相続人の身元を証明し、全員の正確な住所を確認するために必要となります。これにより、家庭裁判所が相続人全員に通知を行うことができます。

遺言書(存在する場合)

遺言書は、その内容に基づいて相続を進めるため、必要となります。遺言書がある場合、その内容を確認し、遺言執行者の有無や内容の妥当性を検討します。

財産目録

財産目録は、被相続人の財産を詳細に把握するために必要です。これには、不動産、預貯金、株式、動産、生命保険などの全ての資産と、借入金や未払いの負債も含まれます。正確な財産目録がなければ、公平な分割はできません。

申立書

申立書は、遺産分割調停を家庭裁判所に申請するための書類です。申立書には、相続人全員の情報、相続財産の詳細、調停を希望する理由などを記載します。これが調停の正式な開始を意味します。

手数料

調停申立てには、手数料がかかります。手数料は、家庭裁判所での手続き費用をカバーするために必要です。金額は財産の規模や調停の内容により異なりますが、被相続人一人につき、収入印紙1,200円にくわえ、書類を郵送する代金程度の金額が一般的です。

不動産の登記簿謄本

不動産が相続財産に含まれる場合、その権利関係を明確にするために不動産の登記簿謄本が必要となるでしょう。登記簿謄本は、財産の正確な評価や分割方法を決定する際に重要です。

遺産分割調停を有利に進めるには?

遺産分割調停を有利に進めるためには、事前準備と戦略的なアプローチが重要です。
まず、相続財産の全貌を正確に把握することが求められます。前項目でお伝えした被相続人の財産目録を詳細に作成し、不動産の評価や預貯金、株式などの金融資産、動産などを正確にリストアップします。

また、負債がある場合はその詳細も確認し、可能な限り証拠書類を揃えておきます。これにより、調停の場での情報共有が円滑になり、説得力のある主張を展開することができます。

くわえて、相続に関する基本的な法律知識を身につけておきましょう。相続分や遺留分の法的な基礎を理解し、自分の権利を正確に把握することで、調停の過程で有利な立場に立つことができます。必要に応じて弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受けることで、法的な手続きを円滑に進めることができます。特に、複雑な相続案件では専門家の支援が不可欠です。

さらに、他の相続人との良好なコミュニケーションが調停を成功させる鍵となります。事前に意見交換を行い、相互の希望や立場を理解することで、調停の場での対立を避け、円滑な協議を進めることができます。対立がある場合でも、冷静かつ理性的に話し合いを進めることを心がけてください。合理的な提案を行い、譲歩できる部分を見極めることで、全体として有利な結果を得ることができます。

なにより、自分の主張を裏付けるための証拠を確保しておきましょう。財産に関する証拠書類や被相続人の意志を示す書類などを整理し、必要な場合に提示できるように準備しておくことで、説得力を高めることができます。これらの準備を徹底することで、遺産分割調停を有利に進め、円満かつ公平な相続分割を実現することが可能になります。

遺産分割調停を行うメリット・デメリット

遺産分割調停の最大のメリットは、相続人間の合意に基づく解決が図れることです。

調停は裁判とは異なり、相続人全員が納得する形で遺産分割を行うため、家庭内の対立を最小限に抑えられます。また、調停は非公開で行われるため、相続人間のプライバシーが保護されます。さらに、調停は裁判に比べて費用や時間の負担が軽減されることが多く、迅速な解決が期待できます。

専門家(調停委員)が中立の立場で関与するため、法律や実務に基づいた適切なアドバイスが得られ、公正な解決が図られます。これらの要素により、調停は柔軟かつ円滑な遺産分割を実現するための有効な手段と言えます。

一方、遺産分割調停にはいくつかのデメリットも存在します。まず、全ての相続人が合意に至らなければ調停は成立しません。相続人間での意見の対立が激しい場合、調停は不成立に終わり、結局裁判での解決を余儀なくされることがあります。

また、調停には時間がかかることがあり、特に複雑な財産や多くの相続人が関与する場合、解決までに多くの調停期日が必要になることもあります。
さらに、調停においては専門的な知識が求められるため、弁護士などの専門家の助けを借りる必要が生じる場合があり、その費用がかさむこともあります。調停は必ずしも全ての問題を解決できるわけではなく、特に法的な争点が多い場合は限界があると言えます。

まとめ

遺産分割調停(相続調停)は、相続人間での財産分配に関する紛争を解決するための家庭裁判所での手続きです。遺言書がない場合や、遺言書があっても相続人間で意見の対立がある場合に利用されます。

この手続きは、調停委員が中立的な立場から相続人の意見を調整し、公平な解決策を導くことを目的としています。遺産分割調停を検討されている方は、調停を通じて円満な相続分割を実現するためにも、今回お伝えしたポイントを押さえて準備を整えておきましょう。

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