終活のひとつとして「エンディングノート」を作成しようと考えている方も多いのではないでしょうか。「何からどう書いていけば良いの?」「どんなノートを使えばいいの?」「エンディングノートはいつ作っておくべき?」と悩まれている方のために、この記事では、エンディングノートについての基本知識や書き方について詳しくご紹介していきます。
中には、終活やエンディングノートと聞いて、ネガティブなイメージを持たれる方もいるかも知れません。しかし、終活やエンディングノートの作成は、自身の人生を振り返り、これからの人生をどう生きていくかを考えるための前向きな作業です。いつ始めても早すぎるということはありません。思い立った時や気になった時に、少しずつ進めていくことをおすすめします。
「エンディングノート」とは?
エンディングノートとは、万が一の時のために自分の考えや希望、必要な情報を残しておくためのノートです。病気で意思を伝えるのが難しくなった際や亡くなった後、家族や身近な人たちに、しっかりと自分の意思を伝え、様々な手続きの負担を減らす役割があります。エンディングノートは、別名「終活ノート」とも呼ばれ、終活を進める上で欠かせないツールです。
法的な効力がない分、気軽に書き始めることができ、何度でも書き直しをすることができます。エンディングノートに書き出すことで、自身の考えや財産を整理し把握することができるため、遺言書を作成する前の下準備としても役立ちます。具体的な書き方や内容については、後の項目で詳しくご紹介していきます。
「エンディングノート」のフォーマットは?
法的な効力を持つ遺言書とは違って、エンディングノートには決められたフォーマットがありません。普通のシンプルなノートを使って思うままに書き進めても良いですし、市販されているエンディングノートを使い、フォーマットに沿って書き進めても構いません。現在では、文具店や書店などで様々なデザインや形式のものが販売されています。
また、アナログのノートではなく、パソコン上のソフトなどにデジタルデータとして残しておく方法もあります。好みに合わせて、自分が最も書きやすいノートや形式を選ぶと良いでしょう。
「エンディングノート」と「遺言書」の違いとは?
エンディングノートと遺言書の大きな違いは「法的効力」があるかどうかです。両方とも、遺産相続などについての意思を残しておくことができますが、「エンディングノート」には法的な強制力がありません。自身が亡くなった後に、確実に希望を叶えたい場合は、法的効力のある「遺言書」を規定に従って作成する必要があります。
ただし、遺言書に書くことができる内容は厳格に定められており、自身が亡くなった後に関しての限られた事項(遺産相続や子どもの認知など)のみとなります。一方のエンディングノートには、病気や不慮の事故にあった際の延命措置についてや、介護、葬儀、供養、ペットに関する希望などを自由に残しておくことができ、意思疎通が難しくなった際にも役立ちます。
「エンディングノート」を作成するメリットについて
ここでは、エンディングノートを作成することによって、どの様なメリットがあるのか、具体的にご紹介していきます。
亡くなった後に自身の意思や希望を託すことができる
エンディングノートを作成することで、自身が亡くなった後、遺された家族や身近な人たちに、意思や希望を伝えることができます。また、自分史などを書き記しておくことで、自分しか知らなかった思い出を共有し、引き継ぐことができます。その他、家族や友人へ伝えたい個人的なメッセージを残しておいても良いでしょう。
自分の資産や経済状況を把握することができる
資産に関することは、エンディングノートに書き記しておくべき重要な項目のひとつです。自身の資産を整理し、経済状況を正確に把握することで、遺産の相続先や今度の過ごし方を冷静に考えることができます。
遺された家族や身近な人の負担を減らせる
介護や延命措置、葬儀や供養についての希望や費用の捻出方法を記しておくことで、意思疎通が難しくなった場合や、亡くなった後、家族や周囲の人たちが迷うことなく判断や手続きを進めることができます。
万が一の際、遺された方は悲しみの中で多くの手続きを進めなくてはなりません。物理的、精神的負担を少しでも軽くするためにも、エンディングノートはとても重要なツールとなります。
老後、死後の不安を減らせる
自身の考えや希望をきちんと整理して書き記しておくことで、家族や周囲の負担を減らせるだけでなく、自身の不安を減らすことにも繋がります。人生は、いつ何が起こるかわかりません。万が一の時のために、少しずつでもエンディングノートの作成を進めていくことをおすすめします。
今後の人生と向き合うことができる
エンディングノートを作成するためには、必然的にこれまでの人生を振り返り、どの様な最期を迎えたいかを考えることになります。その過程で「本当に大事にしたいもの」や「残りの人生をどのように生きたいか」が見えてくるはずです。今後の人生としっかり向き合うことができるのも、エンディングノートを作成する大きなメリットのひとつと言えます。
「エンディングノート」の書き方・書くべき項目について
決まったフォーマットがなく、自由に書けるからこそ「何から書いていいかわからない」と迷われる方も多いかも知れません。ここでは、エンディングノートに残しておきたい代表的な項目と、それぞれの内容についてご紹介していきます。
自分のプロフィール・基本情報
まず初めに、自分のプロフィールや基本情報について記入していきましょう。氏名、現住所、生年月日、血液型、本籍地などは、様々な手続きの際に必須の情報です。誤字や記入漏れがないよう、下記の記入例も参考にしながら正確に記しておきましょう。その他、必須ではありませんが、自分史や大事な思い出、趣味、好きな食べ物などを書き出すことで、これからの生き方を考えるきっかけにもなります。
《プロフィール・基本情報の記載例》
・氏名
・生年月日
・血液型
・現住所
・本籍地
・家族構成
・学歴、職歴、資格
・マイナンバー
・運転免許証番号
・健康保険証番号
・自分史
・趣味・特技
・大事な思い出
・好きな食べ物など
もしもの際の連絡先について
親族や親しい友人など、入院先・入居先や亡くなったことを連絡してほしい人がいれば、リストを作成しておきましょう。連絡して欲しい方の氏名、連絡先、住所に加え、自身との関係性も合わせて記しておくと連絡の際にスムーズです。
《もしもの際の連絡先についての記載例》
・氏名
・電話番号
・住所
・メールアドレス
・自身との関係性
・どのような場合に連絡して欲しいか(入院時・葬儀など)
財産や資産について
エンディングノートには、財産や資産についての項目もしっかり残しておきましょう。前述のとおり、遺言書のように法的効力はありませんが、保有の財産や資産について正確に把握し、管理しておくことで、相続先や今後の生活について冷静に考えることができるというメリットもあります。財産や資産についてをエンディングノートに記すのと同時に、各種の関係書類を整理しておくと、遺された方が相続などの手続きを行う際にスムーズです。各種証書類や、通帳、印鑑、貴重品などの保管場所については、ノートに記しておくか、事前にエンディングノートを託す相手に伝えておくと良いでしょう。
万が一エンディングノートを紛失した場合に悪用されないよう、暗証番号などの重要情報については、別途保管するか信頼できる家族などに託しておくようにしましょう。また、ローンや借入金などの負債も「相続財産」の対象となります。場合によっては、相続破棄などの手続きを取る必要もあります。必ずエンディングノートに記しておきましょう。
《財産や資産についての記載例》
・預貯金についての情報(金融機関名や口座番号など)
・キャッシュカードについて
・通帳、印鑑について
・金庫などに保管している現金
・保険について
・年金について
・保有している株、証券について
・貴金属、骨董品について
・負債(ローン、借金)について
不動産について
不動産を保有している場合は、不動産に関する必要情報をまとめておきましょう。また、不動産登記簿謄本など、不動産関係の必要書類の保管場所についても記しておきましょう。また、その他の資産と同様、不動産の相続に関してもエンディングノートでは法的効力がありません。自身が亡くなった後、相続のトラブルを防ぐためにも、遺言書を作成しておくことをおすすめします。
《不動産ついての記載例》
・不動産の種類(戸建て、アパート、マンション、土地など)
・不動産の用途(自宅、テナント、投資など)
・不動産の住所
・不動産の名義
・不動産登記簿謄本(全部事項証明書)について
・固定資産税納税通知書について
・権利証について
・想定時価
・利用者や管理者の連絡先
遺言書の有無について
前述の通り、エンディングノートには法的効力がありません。希望通り確実に財産を相続したい場合は、遺言書を作成する必要があります。遺言書を作成している場合は、その旨をしっかり記載しておきましょう。遺産相続に関して、思わぬ手間やトラブルの発生を防ぐためにも、保管場所や、遺言書の種類(公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言)についても正確に記しておきましょう。
デジタル遺品について
デジタル遺品とは、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器内や、クラウド上に残された個人情報、SNS、プロバイダ、会員サイトの契約などのことを指します。
これらを削除したり解約するためには、多くの場合IDやパスワードが必要となります。亡くなった後に、残された個人情報が悪用されたり、会費の発生するサービスが継続してしまうことを防ぐため、所有しているデジタル機器や、契約内容、解約方法、必要なIDやパスワードについてしっかりまとめておきましょう。ただし、IDやパスワードは重要な個人情報となるため、扱いには十分に注意しましょう。
《デジタル遺品ついての記載例》
・所持しているデジタル機器(携帯・パソコンなど)
・使用しているクラウドの情報
・SNS、プロバイダ、会員サイト、サブスクの契約について
医療・介護について
認知症などで意思疎通が難しくなった場合に備えて、医療や介護についての情報も記しておきましょう。また、末期の状態になった際、家族は延命措置を続けるかどうかの決断を迫られることがあります。自身の希望をしっかり残しておくことで、家族の精神的負担を軽減することができます。
《医療・介護についての記載例》
・介護保険、健康保険について
・かかりつけ医
・希望の介護について(施設など)
・延命措置について
・持病、常備薬について
・アレルギーの有無
・費用の捻出方法
葬儀について
近年では葬儀の形式も多様化しており、多くの弔問客を招く一般的な形式から、家族や身内だけで行う小規模な家族葬まで様々です。万が一の際に遺された方が慌てないよう、自身の希望する葬儀の形式や、葬儀会社、予算などを事前に記しておくと良いでしょう。手続きなどの物理的な負担が軽減されるだけでなく、「故人の希望を叶えられた」と安心して見送ることができるため、精神的な負担の軽減にも繋がります。
《葬儀についての記載例》
・喪主をお願いしたい人
・訃報の連絡先
・葬儀に呼んでほしい人
・菩提寺の有無
・信仰する宗教
・希望の葬儀の形式(密葬・家族葬など)
・希望の葬儀会社や火葬場
・予算
・遺影写真について
供養について
供養についても、希望がある場合は記しておきましょう。具体的には、菩提寺の有無やその情報、希望の埋葬方法や予算などが挙げられます。特に希望やこだわりがない場合は、遺された家族や親族などに一任する旨を記しておくと良いでしょう。
《供養についての記載例》
・菩提寺の有無
・希望の納骨・埋葬方法、場所
・お墓について
・予算
ペットについて
ペットを飼われている方は、ペットに関する項目も記しておきましょう。世話が難しくなった場合や亡くなった後に、誰に託すのかを始め、ペットのプロフィール、食事について、お世話をする際の注意点、かかりつけの動物病院、ペット保険、血統書などを記載しておきましょう。特に同居人がいない場合や、ペットの情報を知っている人が自分しかいない場合、次の飼い主が受け入れやすいよう、詳細に残しておきましょう。何も情報がないと、希望していた人に引き取ってもらえなかったり、適切なお世話を受けられない可能性があるため注意が必要です。
《ペットについての記載例》
・誰に託すか
・名前
・生年月日
・性別
・性格
・ペットフードやおやつの種類
・お気に入りのおもちゃ
・かかりつけの動物病院
・ペット保険
・血統書
・お世話をする際の注意点など
自分からのメッセージ
家族や親しい友人などに向けて、普段は中々言えない感謝の気持ちや、伝えたいメッセージを残しておくのもおすすめです。もちろん、ノートとは別に、それぞれへの手紙として別途作成し、保管場所を記しておいても良いでしょう。言葉と一緒に写真や思い出の品を添えておいても素敵です。
作成した「エンディングノート」の保管方法について
重要な個人情報が詰まっているエンディングノートは、作成した後の保管方法にも注意する必要があります。また、せっかく作成したエンディングノートも、遺された家族や身近な人の手に渡り、活用してもらわなければ意味がありません。自身でノートを保管する場合は、保管場所について、家族や信頼できる方に事前に共有しておくと良いでしょう。
また、エンディングノートを託す相手がいない方や、身内に負担をかけたくない方、どこに保管したら良いのかわからない場合は、民間企業、社団法人、NPO法人などが提供している「身元保証サービス」を利用するという方法もあります。サービスの内容や利用料金は運営元によって様々ですが、各種保証人の代行を始め、緊急時の対応や、エンディングノート作成からお預かりまで、幅広いサポートを行う企業もあります。
また、エンディングノートは一度書いたら終わりというわけではありません。定期的に内容を見直し、考えや資産状況などが変わった場合は都度書き直していきましょう。
まとめ
エンディングノートを作成することで、遺された方々の物理的、精神的負担を軽くするのと同時に、自身の考えや家族への想い、資産状況などを整理することができます。エンディングノートを作成し始めるのに、早すぎるということはありません。今後の人生をより豊かに過ごすためにも、少しずつ書き進めてみてはいかがでしょうか。