判断能力が不十分な人たちの利益や権利などを守ることが出来る成年後見制度。認知症や知的障害などの理由で自分で判断することが難しい、判断能力が全くない人をサポートしてくれます。契約や相続手続きなどに活用されることが多く、お金にまつわるトラブルを事前に防いでくれます。そこで将来のためにも知っておきたい、成年後見制度について解説します。
そもそも成年後見制度とは?
成年後見制度は判断能力がない、または下がっている人のサポートをすることが出来る制度です。認知症や知的障害などがある人を対象に、自己判断能力が低下した人の財産などを守ります。家庭裁判所から選任された人が成年後見人となり、本人の代わりになって財産の管理や権利の主張などをします。契約や相続の場面でも利用することができ、本人が不利益を被らないように手助けするのです。後見人が居れば間違えて契約してしまったものを無効にすることが出来たり、相続時に本人の意識とは関係なく押印してしまったときなどに無効を主張したりすることが可能になります。本人の判断能力の低さによって起こるトラブルを防げるのは大きなメリットです。
成年後見制度には2種類あり、法定後見と任意後見があります。法定後見は家庭裁判所によって成年後見人を選定するもので、任意後見は本人が判断能力のあるうちに自分で任命するものです。法定後見は本人の配偶者や親族などが手続きすることで、成年後見人の手続きが開始されます。成年後見制度の中でも利用者が多いのは、この種類です。任意後見は将来認知症になりそう、自分の判断能力が低下すると考えたときに本人が任命します。判断能力のあるうちに任命することで、本人も安心感が得られるのが良いところです。法定後見の手続きをすることが出来るのは本人と配偶者、4親等内の親族です。対象となるのは判断能力が不十分な人になります。任意後見は申し立てが出来るのは本人のみで、判断能力のあるうちに済ませる必要があります。
成年後見制度にかかる費用はどのくらいか?
成年後見制度を利用するときに掛かる費用は申し立ての手数料が3,400円〜、郵便切手代が約500円となります。申し立て手数料は家庭裁判所に支払うお金で、収入印紙を購入して支払うのが決まりです。郵便切手代は家庭裁判所から送られてくる書類の郵送代に使われます。本人の精神状態や判断能力を調べるために必要な鑑定費用は、最大で10万円と言われています。鑑定をする医師によって価格は変わってくるので、事前に、調べておきましょう。またこれらの費用に加えて医師に依頼する診断書が数千円、戸籍謄本や住民票は数百円掛かります。
成年後見制度の始め方
家庭裁判所から選任される法定後見制度を利用する場合は、裁判所に後見開始の申し立てをします。被後見人が自分の住んでいる地域の家庭裁判所に出向いて、手続きをするだけです。手続きをする際にはいくつかの書類を用意することが求められます。申し立て書と診断書、本人の戸籍謄本や後見人に関する書類です。申し立て書は家庭裁判所やホームページで配付されていて、戸籍謄本は役所で入手します。後見人に関する書類は候補者の戸籍謄本と住民票、身分証明書と登記事項証明書を1通ずつ用意しておきましょう。
書類を提出して申し立てをすると、事実関係の調査がスタートします。本人や申し立て人、候補者などが裁判所に呼ばれて、面談をします。さらに家庭裁判所が選んだ医師によって鑑定が行われて、認知症や知的障害の程度などを調べる流れです。面談や鑑定から判断をして、問題がなければ成年後見制度を利用することが出来るのです。
任意後見人を選ぶときには、役場で任意後見契約をして公正証書の作成をします。任意後見契約をするときには将来の生活や介護について、不動産や現金などの管理方法、後見人にお願いしたい事務手続きなどを決めておきましょう。
公正証書を作成するときには本人の戸籍謄本か住民票、印鑑登録証明書や身分証明書を提出します。後見人候補の人は住民票と印鑑登録証明書、身分証明書を準備しましょう。手続きは2週間から3週間程度で完了します。