遺言書は故人の遺志を示すものでありますが、内容に何らかの不備があれば遺言書の法的効力は失われ無効となります。しかし、公正証書遺言書について言うならば、例外となるケースはありますが無効となる心配はまずないです。それほどまでに信頼性が高い公正証書遺言とは何かということを、特徴や作成方法、費用と言ったことを通じて解説していきましょう。
公正証書遺書とは?
公正証書遺言書とは、被相続人、この場合は遺言者が公証役場にて公証人と2人以上の証人に立ち会いをしてもらいながら作成する遺言書です。遺言者が立ち会う人がいない状況で文書を作成する自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合には、日付が入っていないとか文章の意味がわかりにくいといった問題で無効になる可能性があります。しかし、公正証書遺言書の場合には、公証人と証人が内容を確認するので、そういった基本的な問題は起こりにくいです。しかも、作成した遺言書の原本は、公証役場にて保管されます。つまり、第三者によって内容が改ざんされたり、相続が発生するまでに紛失するリスクはありません。こういったことから、公正証書遺言書は最も信頼性が高い遺言書とされています。
なお、公正証書遺言書で作成をすれば、無効にならないと誤解する人がいますが、それは間違いです。例えば遺言書の作成をした当時に認知症や精神障害を患っていたら、遺言能力がないので無効になります。あるいは証人が資格を持たない人であったとか、公序良俗に反する内容であったといったことも無効です。そういったことで公正証書遺言書が無効とならないように、事前の準備は入念にやっておきましょう。
公正証書遺書の作成方法
公正証書遺言書を作成するためには、まず準備として遺言者が自分の持っている財産を残らず調べます。家族でさえ知らない銀行口座や債券なども明らかにしなければいけません。そして、誰に、どのような配分で財産を渡したいのかを決めます。なお、公正証書遺言書であろうとも、遺留分を侵害することはできないので気をつけましょう。準備が整ったら、遺言書の原案を作成します。正式な書類の作成は公証役場で行いますが、内容は遺言者自身が考えるものです。ノウハウがないというならば、司法書士や行政書士の力を借りると良いでしょう。さらに公正証書遺言書の作成で必要となる印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)、遺言者と相続人の続柄がわかる戸籍謄本や除籍謄本、遺贈を受ける人の住民票、財産についての詳しい資料などを用意します。
原案と必要書類を用意できたら、公証役場に提出をして公正証書遺言書作成日の予約を入れます。専門家に原案の作成を依頼していた場合には、予約をする前に専門家と公証人で事前協議で内容の修正を行いますが、それは遺言者の意思を尊重したものです。具体的な日程が決まったら、証人の選定をします。未成年者など資格を持たない人を選ばないように注意して選ばなければいけません。
作成当日には、2人以上の証人とともに公証役場に赴きます。そこで、公証人が本人確認といくつかの質質疑応答を行った後、遺言者と証人に向けて遺言書の内容を読み聞かせます。読み聞かせの内容に問題がないならば、遺言者と証人続いて公証人の署名押印をして完了です。あとは原本、正本、謄本が作成されるので、原本は公証役場に保管され、正本と謄本を持ち帰ります。
公正証書遺書の費用について
公正証書遺言書を作成するために必要な費用ですが、まず手数料は財産の合計額で決まります。100万円までならば5千円で、5000万円から1億円以下は4万3千円、1億円以上3億円以下は5000万円ごとに4万3千円に1万3千円を加算していくというように、財産が多いほど手数料も増えます。あとは、証人を自分で用意できずに公証役場に紹介してもらうときには、1人につき6000円前後の報酬が必要です。
さらに遺言者が公証役場に行けないとき、公証人に出張してもらいます。その際の公証人の出張費や交通費は実費で、日当は1日2万円(4時間以内なら1万円)です。